ポケモンで最強のタイプはどれか?~ゲーム理論的アプローチ~

注意

筆者はポケモン対戦未プレイ勢であり、本解析にはポケモン対戦の実体が充分に反映されておりません。そもそも、この記事は、最強のタイプを求めることよりも、ポケモンという身近な題材を理論的に解析して楽しむことを目的としています。

はじめに

本記事では、ポケモンで最強のタイプを、ゲーム理論的な観点から求めてみます。 ゲーム理論は、相手の行動を考慮した上で、自身の最適な行動を解析する理論です。 これをポケモン対戦に適用すると、相手が繰り出すポケモンのタイプを考慮した上で、こちらが繰り出すべき最適なタイプを導けるようになります。

例えば、一般に強いとされるタイプ(例えば鋼タイプ)があり、こちらはそのタイプを繰り出したいとします。 一方で、相手はそのタイプに相性の良いタイプ(例えば炎タイプ)を繰り出したいはずです。 同様に、こちらもそのタイプに相性の良いタイプ(例えば水タイプ)を繰り出したくなります。 同様の議論は延々と繰り返され、特定のタイプには落ち着かないのですが、 ゲーム理論を使えば、最終的に落ち着くタイプ(正確には各タイプを繰り出す割合)を求めることができます。 そして、本記事では、そのタイプを「最強のタイプ」と呼ぶことにします。

分析方法

本記事では以下の状況を扱います。

  • お互いにポケモン1匹を同時に繰り出す
  • ポケモンはタイプを1つのみ持つ
  • タイプ相性で有利なポケモンの勝ち
  • 攻撃効果率-防御効果率がポイントとして勝者に与えられる(効果率と呼びます)

例えば、プレイヤ1が炎タイプ、プレイヤ2が草タイプを出した場合、炎→草が2倍で、草→炎が0.5倍であり、炎タイプ(プレイヤ1)の勝ちになります。そして、2-0.5=1.5ポイントがプレイヤ1に与えられます。

ポケモン対戦においては「このタイプを繰り出せば必ず勝てる」というタイプはありません。 したがって、特定のタイプに固執せず、繰り出すタイプをある程度ランダムに決めることが最善の戦略となります。 例えば、「炎タイプ10%、水タイプ15%、・・・」といった感じです。 繰り出す割合を「使用率」と呼ぶことにします。 本記事では、使用率が最も高いタイプを「最強のタイプ」と解釈します。

ゲーム理論を用いた最適な使用率の計算方法の説明は省略します。 分かる人向けに簡潔に書きますと、ポイントを利得行列とした行列ゲームを線形計画法で解きました。

最強のタイプ

それでは、結果を発表します。 参考に、一般にタイプの強弱を評価する指標となっている、有利なタイプ数、不利なタイプ数、それらの差分、効果率の合計も記載しました。また、本記事の最後に、付録として複合タイプありの解析結果も載せています。興味のある方はご参照下さい。

順位 タイプ名 有利数 不利数 差分 効果率 使用率[%]
1 5 3 2 1.5 16.40
2 ドラゴン 4 3 1 -1.5 10.40
3 4 7 -3 -3.5 9.82
4 電気 3 3 0 0 9.07
5 5 4 1 2 8.98
6 地面 5 5 0 2 8.65
7 10 5 5 4 7.93
8 フェアリー 4 3 1 2 6.17
9 ゴースト 4 1 3 1.5 6.17
10 4 5 -1 -1.5 5.82
11 飛行 4 4 0 1 4.70
12 4 5 -1 -0.5 4.41
13 2 3 -1 -0.5 1.47
14 格闘 5 5 0 0 0.00
15 6 5 1 -0.5 0.00
16 ノーマル 0 3 -3 -2 0.00
17 4 7 -3 -2 0.00
18 エスパー 2 4 -2 -2 0.00

最強のタイプは「水タイプ」であることが分かりました。 ただし、その理由を読み取ることは難しいです。 いろいろ考えてみましたが、いいアイデアが浮かびませんでした。

さらに、特筆すべき点は以下かと思います。

  • ドラゴンタイプが2位

効果率の合計で言えば決して優秀ではありませんが、おそらくメジャーなタイプ(草・炎・水・電気)に有利であることが理由で、上位にランクインしたのではないでしょうか。

  • 草タイプが3位

一般的に草タイプは不遇タイプとして知られているので意外かと思います。 1位である水タイプに攻撃2倍かつ防御0.5倍をとれる唯一のタイプであることが理由かと思います。

  • 格闘・岩・ノーマル・虫・エスパーは使用率0%

ポケモンはタイプ相性が複雑であり、どのタイプにも活躍の場があると考えていたので、使用率が0%である(使うと損してしまう)タイプがあることは意外でしたし、同時に残念でした。

おわりに

本記事では、ポケモンで最強のタイプを、ゲーム理論的な観点から求めてみました。 その結果、最強のタイプは水タイプであることが分かりました。 また、意外な結果として、一般には不遇なタイプであるとされる草タイプが3位になりました。 ゲーム理論的な弱点の付き合いの結果が反映されていることが分かり、面白い解析となりました。

そして、残念なことに、5つのタイプについて、使用率が0%になってしまうことも分かりました。 これはゲームとしては致命的で、自分の好きなポケモンがそれらのタイプに含まれると、自分の好きなポケモンではトップを取れないということであり、プレイすることへのモチベーションを下げしまいます。 この状況は何としてでも解決しなければいけません。 次回の記事では、どのタイプにも活躍の場を与えるためのタイプ相性バランスの調整について検討してみようと思います。

謝辞

ポケモン対戦のことを教えてくれた友人に感謝いたします。 教えていただいたポケモン対戦の実体を充分に反映できなかったので、別の機会に検討してみたいです。

付録:最強のタイプ(複合タイプ編)

参考に複合タイプありについても分析を行いました。 概要だけ以下に記載します。 全データはこちらをご覧ください。 26位以降の使用率は0%でした。

特筆すべきこととして、単タイプの分析で使用率0%であったタイプも、タイプを組み合わせることで、活躍の場ができることが分かりました。

順位 タイプ1 タイプ2 使用率[%] 順位 タイプ1 タイプ2 使用率[%]
1 電気 フェアリー 9.14 14 格闘 エスパー 3.47
2 ドラゴン 8.10 15 3.31
3 電気 飛行 7.78 16 格闘 ゴースト 3.15
4 6.82 17 ドラゴン 3.13
5 ゴースト 5.55 18 飛行 2.70
6 地面 5.49 19 電気 地面 2.43
7 5.46 20 2.38
8 ドラゴン 5.34 21 地面 飛行 2.16
9 4.72 22 地面 1.98
10 地面 4.24 23 ノーマル ゴースト 1.15
11 4.23 24 格闘 0.05
12 電気 3.65 25 格闘 飛行 0.04
13 地面 3.56